株式会社みらいワークス岡本社長との対談(2)
「大人のマインドチェンジ」をビジネスに
俳優からIT業界に転身されたわけですが、そこからさらに独立・起業という道を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
飯塚:本を出したり講演をしたりといった活動は会社員時代から始めていたのですが、ある時点で、サラリーマンという存在のままそういった働き方を続けていくことに限界を感じるようになりました。個人的に発信していることでも所属組織のメッセージとして受け取られてしまいがちなので、このままでは会社にも迷惑をかけてしまう・・・と思ったことが独立した理由です。ですので、積極的に起業したかったというよりも、独立せざるを得ないという感じで決断したというのが実情でしたね。
ただ、起業するからには自分の属するIT業界の発展に一役買いたいという想いがあったのも事実です。会社員時代から社内研修の講師の仕事をする中で、「常に資格を目指して、幾つも取得しているのに、現場での業務レベルはあまり上がらず、周囲からの評判もそれほどよくならない」というタイプの人が一定数存在しているなと思っていて。資格や知識などの“ハードスキル”と、いわゆる人間力のような“ソフトスキル”、この両方をバランスよく持っている人材の少なさをひしひしと感じていました。そのような人材の不足はIT業界の抱える課題の一つであると思っていたので、起業するにあたっては、ハードスキルである「賢さ」とソフトスキルである「面白さ」を兼ね備えた人材を育成することを目指しました。社名の「エモーションソリューションズ」はその想いに由来しています。
独立してから現在までの1年間で手掛けられた講師業は数多くの高評価を得ているとお聞きしていますが、ご自身で気を付けていらっしゃるポイントなどはあるのでしょうか?
飯塚:ポイントはいろいろあるのですが、まずはとにかく受講者の方々のパーソナリティを認めること、かつ相手をリスペクトして適切な距離感の中で信頼関係を築くことを意識しています。その上で、講義の進め方に関して最も大事にしているのは、「なぜそれを勉強しなければならないのか」、「なぜそれがビジネスシーンで活きるのか」といった、その講義を受ける意義や価値、例えば資格取得のための講義であればその資格の存在意義などを、最初にきちんと理解してもらい、納得してもらった上で先に進むということです。
ありがたいことに研修会社さんからは継続的に高い評価をいただいています。会社からの指示で渋々参加したような方から最終日に「受講してよかった」とおっしゃっていただくことも多いので、自分の教え方には他の講師の方にはない何かがあるのだと思うのですが、現時点ではそれを著書や営業ツールなどの形としてアウトプットするには至っていないので、2期目はそれが課題ですね。その「他の講師と違う何か」をロジカルに言語化してコンテンツとしてまとめられれば、「大人のマインドチェンジ術」として社会人教育の世界で革命を起こせるかもしれない、そう思っています。
当面は、対象者を45歳以上くらいに絞った中高年限定の再就職支援など、わかりやすいものから始めようと思っています。その他の世代に向けたものも企画したいとは思っているのですが、そちらは10年くらいかけて種をまいて育てようかなと。一人でやるにはかなりしんどい仕事ですが(笑)。
確かにこれから40代で初めての転職を経験する人が増えてくることを考えると、それくらいの年齢でも自分を変えることができるとなれば、日本全体の可能性もグッと上がりますよね。ただ、40歳以降での初転職というのはなかなか大変なのも事実ですよね。
飯塚:同感です。職務経歴書を書いたこともないわけですからね。それどころか、一つの会社にしか勤めたことがなければ職務経歴書が必要なことすら知らないケースもありうる。40歳を過ぎて転職することになり、書かなければならない状況になって初めて失われた時間の重みに気づく・・・というのは酷な話です。
私自身は、転職する・しないに関わらず、自分の市場価値を確認する意味で職務経歴書は毎年アップデートしています。独立してからは、単純に前の年よりも高く売れる存在になっているかをチェックするという意味でも役に立っていますね。ですが、このような自分の評価を高めるための戦略的なアプローチというのは、サラリーマンでいる間はなかなか学ぶ機会もないですよね。会社は当然のことながら自分の売り方なんて教えてくれませんから。その意味では、こういった部分もビジネスとして非常に狙い目なのではないかと感じています。
※この対談は株式会社みらいワークス様主催にて、2017年6月9日に行われたものです(承諾の元、サイト内の記事を紹介しております)